統計学基礎
分散分析とカイ二乗検定をどう使い分けるか。
読者の問い
平均値の多重比較と、比率やカテゴリの相関分析を混同せず適切に分類するには?
一元配置分散分析(ANOVA):3群以上の平均値比較
「勉強スタイル(A群:テキスト中心、B群:アプリ中心、C群:講義動画中心)」という3つのグループ間で、テストの「平均点(数値データ)」に統計的な差があるかを検定したいとします。このように3群以上の平均値を比較する場合に用いるのが「一元配置分散分析(ANOVA)」です。
全体としてのばらつきを「グループによる変動(効果による平方和)」と「グループ内の個人差(残差による平方和)」に分解します。そして、「効果によるばらつき」が「残差によるばらつき」に比べて十分に大きいかどうかを、それらの不偏分散の比(F値)をとることで評価します。
仮にF値が臨界値を超えていれば、「3つの勉強スタイルのうち、少なくともいずれか1つのペアの間には、平均点に有意な差がある」と判断します。
カイ二乗検定(独立性の検定):カテゴリ同士の関連
一方で、「勉強スタイル(A群、B群)」というカテゴリと、「合否(合格、不合格)」というカテゴリの間に、何らかの関連性があるかどうか(独立であるか)を調べたいとします。このように、数値の平均ではなく「人数や回数(頻度)」のクロス集計表(分割表)をもとに分析を行うのが「カイ二乗独立性検定」です。
この検定では、「もし2つの変数が完全に無関係(独立)であるならば、確率的にこれくらいの人数になるはずだ」という「期待度数」を計算し、実際の「観測度数」とどれだけズレているかを評価します。ズレの大きさを表すカイ二乗統計量を算出し、それがカイ二乗分布の臨界値より大きければ、「2つの属性は独立ではなく、関連がある」と結論づけます。
期待度数の具体的な計算例
独立性の検定で基本となる「期待度数」の求め方を簡単な数値で説明します。
いま、Aスタイルで学んだ人が50人、Bスタイルで学んだ人が50人、計100人の被験者がいます。テストの結果、全体で60人が合格し、40人が不合格になりました。
もし「勉強スタイル」と「合否」が完全に独立(無関係)である場合、Aスタイルを選んだ50人のうち合格する人数は、全体の合格率(60/100 = 60%)と同じ割合になるはずです。
・Aスタイルの合格者の期待度数 = 50人 × (60 / 100) = 30人 ・Aスタイルの不合格者の期待度数 = 50人 × (40 / 100) = 20人 ・Bスタイルの合格者の期待度数 = 50人 × (60 / 100) = 30人 ・Bスタイルの不合格者の期待度数 = 50人 × (40 / 100) = 20人
この期待度数(全員30人または20人)と、実際のアンケート結果から得られた観測度数の差を2乗し、期待度数で割ったものの総和がカイ二乗統計量になります。ズレが大きいほど、独立という仮定から遠ざかるため、有意に関連しているとみなされます。
よくある誤りとその理由
誤り:3群以上の平均値を比較する際に、分散分析を行わず、2群ずつのt検定を何度も繰り返してしまうこと。
理由:有意水準5%でt検定を3回(A-B間、B-C間、A-C間)繰り返すと、少なくとも1つの検定で誤って有意と判定してしまう確率(第一種の過誤の全体確率)は「1 - (0.95)³ ≒ 14.3%」にまで膨れ上がってしまいます。これを防ぐために、まずは分散分析によって全体の有意性を一括でF検定し、そこで差が認められた場合のみ、多重比較法を用いて個別の群間を探索するのが正しい手順です。
参照資料
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