対応のある2標本の母平均の差のt検定
問題文
ある研修プログラムの受講効果を検証するため、受講者10名を無作為抽出して受講前と受講後に同一難易度のテストを実施しました。「受講後点数 - 受講前点数」で定義される得点差 d を集計したところ、得点差の標本平均は d̄ = 6.0 点、不偏分散は s_d^2 = 25.0(不偏分散の平方根 s_d = 5.0 点)でした。受講後の母平均得点が受講前より高いと言えるかを調べます。向上を調べる片側検定はデータを見る前に決めたものとし、有意水準5%で検定しなさい。受講者間の得点差は互いに独立で同じ正規分布に従うものとし、自由度9のt分布の上側5%点は t(9) = 1.833、自由度18のt分布の上側5%点は t(18) = 1.734 とします。
与えられた条件
| 項目 | 値 |
|---|---|
| ペア数 (n) | 10 |
| 得点差の標本平均 (d̄) | 6.0 点 |
| 得点差の不偏分散 (s_d^2) | 25.0 点² |
| 得点差の標本標準偏差 (s_d) | 5.0 点 |
| 有意水準 (α) | 0.05 (片側) |
| t臨界値 t(9) | 1.833 |
解答・途中計算
仮説の設定
差は受講後−受講前と定義します。事前に向上を調べると決めているため、μ_d > 0を対立仮説にします。片側検定の帰無仮説μ_d ≤ 0の境界μ_d = 0で検定統計量の分布を計算します。
標準誤差 SE の計算
不偏分散の平方根s_dとペア数nから、平均差の標準誤差を算出します。s_d自体が母標準偏差の不偏推定量という意味ではありません。
検定統計量 t値の計算と自由度
同じ人の前後を対応付け、各人の差を1観測として扱うため1標本t検定に帰着します。母分散は未知、差は独立な正規標本と仮定しており、自由度はn−1=9です。前後それぞれの正規性ではなく差の正規性が条件です。
判定
t値が臨界値 1.833 を大幅に上回り、p値が 0.05 より小さいため、帰無仮説 H0 は棄却されます。受講後−受講前の母平均差が正である統計的証拠が得られます。p値は自由度9のt分布の上側確率です。対照群のない前後比較だけでは、練習効果などを除いた研修自体の因果効果は断定できません。
最終結論
検定統計量 t ≒ 3.79 であり、自由度9の片側5%臨界値 1.833 を上回るため帰無仮説は棄却され、受講後の母平均得点が高いと判断される。ただし、研修そのものが原因とはこの検定だけでは結論づけられない。
誤答しやすい考え方
典型的な誤り:自由度を df = 10 + 10 - 2 = 18 として独立2標本t検定を行う
理由・解説:同一人物内の前後測定を独立と扱う誤りです。差の分散は前後の共分散を含み、独立2標本の分散とは異なります。今回は10個の差を使うため自由度9です。対応による精度の改善幅は相関に依存します。
典型的な誤り:両側検定臨界値 2.262 を適用して判断する
理由・解説:データを見る前に向上を調べる片側検定を指定しているため、上側5%点1.833を使います。両側の2.262を使っても今回は棄却されますが、指定した検定手順とは異なります。観測結果を見てから片側に変更してはいけません。
参照資料
この概念をアプリで練習する
統計検定2級の演習・復習アプリ機能です。実際に手を動かして理解を深めましょう。
本サイトの例題はすべて架空のデータを元に独自に作成されたものです。出題意図や難易度調整の基準については問題作成方針をご確認ください。
問題作成方針を見る制作・検証情報
- 執筆・構成
- kuma / bearworks.uk(問題設計)
- 検算・内容確認
- Gemini(原稿の独立計算・教育内容レビュー)、Codex(修正・独立検算・実装確認)、Luna(品質監査)
- 最終公開確認
- kuma / bearworks.uk(2026-09-04に公開内容を承認)
AIを使用した工程
第1バッチ(問6〜10)は2026-09-04に原稿とGeminiによる独立検算・教育内容レビュー結果を受領しました。Codexが誤答説明、前提条件、結論の解釈を修正し、Pythonで独立検算しました。Lunaが内容とリンクを監査しました。修正後の原稿をGeminiが再レビューしたという意味ではありません。
人が確認した工程
運営者が問題設計と実装方針を確認し、検算・品質点検・Linuxでの配信検証の結果を踏まえて、2026-09-04に公開内容を承認しました。専門家による第三者査読ではありません。
更新・訂正履歴
- 初版第1バッチ5問の原稿とGeminiレビューをもとに、Codexが修正・独立検算・実装を実施し、運営者が公開内容を承認しました。
内容の誤りや再検証のご連絡は、お問い合わせページから受け付けています。
誤りを報告する