第1種の過誤・第2種の過誤と検出力(仮説検定の意思決定理論)
問題文
ある精密機械工場で製造される金属ピンの直径 X は、分散 σ² = 4.0(標準偏差 σ = 2.0 mm)の正規分布に従う。設計基準の母平均は μ = 100.0 mm である。機械の経年変化によりピンの直径が基準より大きくなっていないかを監視するため、無作為に抽出した n = 25 本のピンの標本平均 X̄ を測定し、帰無仮説 H_0: μ = 100.0 に対し対立仮説 H_1: μ > 100.0 の片側検定を有意水準 α = 0.05 で行う。 (1) 有意水準 α = 0.05 における標本平均 X̄ の棄却限界値を求めなさい。 (2) 実際には機械の摩耗により真の母平均が μ_1 = 101.2 mm にシフトしていた場合、この検定において正しく帰無仮説を棄却できる確率(検出力 1 - β)を求めなさい。ただし、標準正規分布の上側5%点を z_0.05 = 1.645、累積分布関数として Φ(1.355) ≒ 0.9123 を用いなさい。
与えられた条件
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 帰無仮説下の母平均 (μ_0) | 100.0 mm |
| 対立仮説下の真の母平均 (μ_1) | 101.2 mm |
| 母標準偏差 (σ) | 2.0 mm |
| 標本サイズ (n) | 25 |
| 有意水準 (α) | 0.05(片側) |
| 標準正規分布の上側5%点 (z_0.05) | 1.645 |
| 標準正規累積分布 Φ(1.355) | 0.9123 |
解答・途中計算
標本平均 X̄ の標準誤差 SE の算出
標本サイズ 25 の標本平均のばらつき(標準誤差)は母標準偏差の 1/5 である 0.40 mm となります。
帰無仮説 H_0 の下での棄却限界値 x_c の決定
有意水準 α = 0.05 の片側検定の棄却域は X̄ ≥ 100.658 mm です。標本平均がこの値以上であれば第1種の過誤(誤って棄却する確率)は 5% に抑えられます。
真の母平均 μ_1 = 101.2 の下での標準化
対立仮説が真であるとき、X̄ は平均 101.2、標準誤差 0.40 の正規分布に従います。棄却限界値 100.658 をこの真の分布で標準化すると z = -1.355 となります。
検出力 (1 - β) の算出と過誤のトレードオフ
真に直径が 101.2 mm に太くなっている場合、この検定によって約91.2%の確率で異常を検出して帰無仮説を正しく棄却できます。見逃してしまう確率(第2種の過誤 β)は 1 - 0.9123 = 0.0877(約8.8%)です。標本サイズ n が一定のもとでは、有意水準 α を小さく厳しくするほど棄却限界値が右にずれて β が増大するトレードオフ関係にあります。α を保ったまま検出力 1 - β を高める(β を抑える)には、標本サイズ n を増やして標準誤差 SE = σ/√n を縮小させることが有効です。
最終結論
(1) 棄却限界値は 100.658 mm である。(2) 真の母平均が 101.2 mm であるときの検出力(1 - β)は 約0.9123(約91.2%)である。(第2種の過誤 β は 約8.8%。αとβにはトレードオフがあり、両者を同時に改善するには標本サイズnの拡大が必要)
誤答しやすい考え方
典型的な誤り:棄却限界値: 100.658 mm, 検出力: 0.0877
理由・解説:第2種の過誤 β = 0.0877(異常を見逃す確率)そのものを検出力と取り違えてしまう誤りです。検出力は 1 - β = 0.9123 となります。
典型的な誤り:棄却限界値: 103.290 mm
理由・解説:標準誤差 SE = σ / √n ではなく、母標準偏差 σ = 2.0 を直接用いて 100.0 + 1.645 * 2.0 = 103.29 と計算してしまう誤りです。標本平均の検定では √n で割る必要があります。
典型的な誤り:棄却限界値: 100.784 mm
理由・解説:片側検定であるにもかかわらず、両側検定の臨界値 z_0.025 = 1.96 を用いて 100.0 + 1.96 * 0.40 = 100.784 と計算してしまう誤りです。
参照資料
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本サイトの例題はすべて架空のデータを元に独自に作成されたものです。出題意図や難易度調整の基準については問題作成方針をご確認ください。
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- 執筆・構成
- kuma / bearworks.uk(問題設計・テーマ指定)
- 検算・内容確認
- Antigravity(問題作成・独立検算・実装確認)、Codex(学術レビュー・実装監査)
- 最終公開確認
- kuma / bearworks.uk
AIを使用した工程
第4バッチ(問21〜25)は公式参考書・問題集の未出題重要論点(物価指数、チェビシェフの不等式、幾何分布、過誤と検出力、フィッシャーの3原則)に基づき、Antigravityが問題・与件・解説・誤答分析を独自に設計・作成し、PythonとSciPyで独立検算しました。Codexが統計学・表記・出典の整合性を読み取り専用で監査・レビューし、指摘事項の反映を確認しました。
人が確認した工程
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